「じゃあコイツ回収ついでに、俺は教室に行くね。今日の放課後は生吹は用事あるから、小太郎が美月ちゃんを家まで送るからね」
「そ、そうなんですね。わかりましたっ」
汰生さんが私に向かって手を振ってくれる。私もお辞儀をしながら振り返した。
けど、
「(あれ?)」
なんで藤堂先輩は、生吹くんが今日用事がある事を知ってたんだろう?
「(それも事前に打ち合わせしてた、のかな?)」
自分で納得をしている間、純也先輩と藤堂先輩が下駄箱へと消えていった。
汰生さんは「ヤバ!ちょっと忘れ物!ここにいて美月さん!」と姿を消す。
一気に三人が居なくなって、その場は唐突に静かになった。
キーンコーンカーンコーン
その瞬間に鳴ったチャイム。
汰生さんを探してキョロキョロする私とは反対に、隣にいる生吹くんが「ねぇ」と私の方をむく。
その時の顔は、何だか不機嫌で……
「純也先輩って、誰?」
「え……」
「美月の、なに?」
口をへの字に曲げて瞳を揺らせる生吹くんが、尚も繋がったままの手に力を込める。
そして、真っ直ぐ私を見つめた。



