不思議がる俺とは反対に、藤堂さんは「やぁ」と俺にした時と同じように手を挙げた。
「君が春風生吹くんか。噂はかねがね――と、まぁ話は座ってからにしようか」
大人っぽい言動が目立つ藤堂さんは、本当に俺らと二個違うだけなのかと、たまに考える。
まぁ、そういうところが総長代理に選ばれる所以かもしれないが。
「初めまして、藤堂伊織だ。A校3年。一輝から聞いてるかもしれないが、Moonの総長代理をしている」
「こんな所で、堂々と自己紹介をしていいんですか?誰かに聞かれたら……」
「優しいねぇ、生吹くん。俺を心配してくれてるの?
でも、大丈夫だよ。俺はその辺の奴らよりも、格段に強いから」
二人の会話を、蚊帳の外で聞いている俺。見えない圧力の掛け合いに、ブルッと身震いした。
「(おっかねぇ会話だなぁ)」
さしづめ生吹は、藤堂さんが「総長代理」と大っぴらに宣言してしまって、敵から狙われるのでは?と心配したんだろ。
けど、藤堂さんは「もし狙われても自分は強いから大丈夫」と返したわけだが。
まぁその通りなんだろ。藤堂さんは強いって噂だし。
ってか、
「(こんな強い奴らが一堂に会する事なんて、ねーよなぁ)」



