「これ……」
中身を偶然に目にしてしまった生吹くん。その手に握られていた「ある物」は、年季が入っているような、古い紙。
「私が施設に入った年に書いた、クリスマスカード。もう10年以上も前のカードだから、ボロボロなの」
「……読んでも、いい?」
「掠れて読みにくい、かも」
「ううん、読めるよ」
笑った生吹くんは、カードの文字を読み上げる。読み上げて行く度に、顔から笑みが消えていくのを、私は眉を下げて見るしかなかった。
サンタさんへ
パパとママに、あいたいな
あいたい、はやくかえってきて
みつきはずっと、いいこに、してるから
ここで、まってるからね
ずっと、まってるからね
みつき
「このカードを、12月24日の施設長50歳の誕生日前日に……私の枕元に置いといたの。
日付が変わった夜中にふと目が覚めたら、サンタさんが隣に立ってて……サンタさん、泣いてた。
あの時は、なんでサンタさん泣いてるの?って思っただけで……子供だよね。
サンタさんに変装した施設長が、私のカードを読んで泣いてたんだって気づいたのは、それから数年経った時だった」



