「うーもう限界。お腹いっぱいで動けなーい」
「そりゃそうよ。美桜ったら、最後のドルチェも二つ食べるんだもん」
「だって選べないじゃない。ティラミスとアフォガート、どちらか一つなんて」
 
部屋に戻り、ソファにもたれてお腹をさする二人に、メアリーが微笑みながら紅茶を淹れてくれる。

「美桜様、また別の日に召し上がっても構いませんのに」
「だって別の日は、また違うレストランに行きたいんだもん。たくさんありすぎるのよ、行きたいところが」
 
まあ、と言ってメアリーは上品に笑った。

「ねえ、まだ九時半だし夜はこれからよ。バーに行かない?」
「えー?もう無理。絵梨ちゃんよくそんな余裕あるね」
「もちろんよ!夜になるほど元気になるんだから、私」
 
なぜか得意気な絵梨に、さすがです、と美桜は頭を下げる。

「仕方ない。仁でも誘うか。それかイギリスボーイをナンパしちゃおうかなー」
 
冗談とも本気とも取れる口調で、絵梨は悠然と部屋を出て行った。

行ってらっしゃーいと見送ると、美桜は急に眠気に襲われた。

「ふわあ、眠ーい。もう寝るね、メアリー」
「はい。あ、歯磨きとお着替えは済ませてからにして下さいね」
「はーい」
 
ふらふらと立ち上がって、美桜は半分目を閉じながら寝る支度をする。

ベッドに入ると、すぐさまスーッと心地よい眠気に誘われた。

「おやすみ、メアリー」
返事を聞かぬうちに、美桜は眠りに落ちた。