(鳥・・・鳥が鳴いてる?)
 
美桜はぼんやりとした頭で考えた。
かすかに鳥のさえずりが聞こえてくる。

(もう朝か・・・起きなきゃ)

ゆっくりと目を開けると、見慣れない高い天井が見えた。
顔に触れる空気の質も違う。

(あれ?なんだっけ、ここ)

しばらくしてから、ようやく昨日の記憶が蘇ってきた。

(そうだ!イギリスに来たんだ。夕べとっても楽しかったなあ)

自然と笑みが浮かぶ。
美桜はそのまま勢い良く起き上がった。

まだ外は明るくない。
枕元の時計を見ると、六時にもなっていなかった。

隣のベッドを見ると、絵梨はぐっすり眠っている。
それはそうだろう。

仕事があるからと、十時くらいに引き上げるアレンに続いて、美桜も早めに部屋に戻って眠った。

仁と絵梨は、きっとその後も真夜中まで飲んでいたに違いない。

(どうしようかな、もう一度寝ようかな)

一瞬そう思ったが、美桜はこのまま起きることにした。

絵梨を起こさないよう、そっと隣のドレッシングルームに行くと、洗顔や着替えを済ませて部屋を出た。

二人が泊まっている部屋は、廊下側からドアを開けると、まず小さな待合室のようなスペースがある。

そこから更にドアが二つ並んでおり、左のドアはベッドルーム、右のドアはドレッシングルームに繋がっている。

つまり、ドアを開けた時にたまたま廊下を通りかかった人に部屋の中を見られる心配もないし、今のようにベッドルームを通らずドレッシングルームから直接廊下に出ることも出来る。