食後はソファに移動して、デザートをお供におしゃべりは続く。

「へえ、アレンはもう大学卒業したんだね」

そう言いながらエスプレッソを飲む絵梨は、なんだかとても(さま)になっている。

「うん、こっちの大学は単位さえ取ればいいんだ。日本みたいに、三月まで待たなくても卒業出来るよ」

今は父親の仕事を一緒にしており、明日の早朝には自宅に戻らなければと言うアレンに、珍しく仁が真剣に聞く。

「どう?家業は。最近は上手くいってるの?」

アレンはソファにもたれると、ちょっと難しい顔をした。

「うーん・・・相変わらずかな。時間だけが過ぎていって、大して進まない。これといった成果も上げられないから、焦るよ」
「まあな、お前の仕事って難しいもんな。貿易商みたいなこともするし、政治的な仕事もあるし。親父さんとお前の二人で全部やるっていうのも無理があるんじゃないか?」
「確かにそれはあると思う。けど、だからと言って他の人に頼むのもどうなのかなって。それに、アイデア次第だと思うんだ。良いアイデアさえ浮かべば、あとは上手く進んでいくような気がする」

うーん、そうかもなと仁は頭の後ろで両手を組んで天井を見上げる。

「まあ、俺じゃあなんの助けにもならないだろうけど、何かあったらいつでも相談してくれ。話を聞くくらいなら出来るから」

いつになく真面目な仁に、アレンは笑顔で答える。

「いや、心強いよ。また相談させてくれ」

二人は右手をグーにして、軽く突き合わせた。

(アレン達、知らない間にぐっと大人になったみたい)

男同士の固い友情や、真剣な仕事の話・・・

「なんだか二人ともかっこいいね」
美桜がそう言うと、
「いやー、そうっすか?溢れちゃってます?俺らのかっこよさ」

キザったらしく前髪をかき上げる仁に、
「ダーメだこりゃ」
と絵梨が両手を広げてお手上げのポーズをする。

また四人は一斉に笑い出した。

楽しい時間はあっという間に過ぎていった。