桜のティアラ〜はじまりの六日間〜

 「ここから見る夕焼け、綺麗なんだ」
 
 そう言って美桜は、登り切った丘の頂上でアレンを振り返る。

 「本当だ。イギリスで見る夕焼けみたい」
 「アレンの秘密の場所?」
 「ああ。ずっとこの先の海で繋がっている気がする」
 「そうね」
 
 柵の前に二人並んで、夕陽が沈みかけた海を眺める。
 
 パークの中央に位置するこの「見晴らしの丘」は、その名の通り見晴らしが良いだけで、他には何もない。

 急な坂道や階段が続くため、ここまで上がってくるゲストはほとんどいない。

 「私もね、時々一人でここで考え事したりしてたんだ。秘密のお気に入りの場所」
 「一緒だね」
 
 アレンが微笑みかける。

 「うん。アレンにも見て欲しかったんだ」
 
 二人はしばらく黙って海を眺め続ける。
 その横顔に、寂しさはもうなかった。

 たくさんの優しさに触れ、二人は感謝の気持ちでいっぱいだった。

 「美桜、俺は必ず美桜を幸せにする」
 「うん、私も。必ずアレンを幸せにする」
 
 温かな夕焼けの中、二人は顔を見合わせて微笑んだ。