「おいしいんだよ、ここの天ぷらは。ほら、美桜ちゃんもどんどん注文しなさい」
 
カウンターに並んで座り、ジョージは美桜にメニューを見せる。

「私はいつもの、おまかせコースにするよ。美桜ちゃんはどれがいい?」
「あ、じゃあ私も同じものでお願いします」
 
メニューを早々に閉じ、美桜はジョージに聞きたいことを頭の中で整理する。

「えっと、お父様」
「なんだい?」

ゆったりとお茶を飲みながら、ジョージが美桜を見る。

「あの、日本にはいつ来られたんですか?」
「今朝着いたんだよ」
「じゃあ、お帰りは?」
「明日の午前の便だ」
「ええ?たった一泊ですか?」
「そうなんだよ、残念ながらねえ。仕方ない。アレン達には、スコットランドの友人の所に三日ほど行ってくると言ってあるからな」
「えっ?日本に来たことは内緒なんですか?」
「まあね。だって天ぷら食べに銀座に行くって言ったら、反対されそうなんだもん」
「なんだもんって、まあ、そうでしょうけど」
「それにね、美桜ちゃん」

改まったようにジョージは美桜に向き合う。