「いやー、良かった。素晴らしかったわ。私、ダメ出ししようと思って見ていたのに、いつの間にかすっかり入り込んじゃって。ただただうっとりしてたわ。踊りって、技術の上手い下手だけじゃないのね。はー、素敵だった」
 
出口で白いバラを一輪ずつプレゼントしながらお見送りしていると、最後に出て来たバレエの先生は、興奮冷めやらぬ様子で美桜と巧にそう言った。

「先生のおかげです」
 
そう言って二人で先生にバラを手渡す。

(いつもは鬼のような先生が、今日は恋する乙女みたい)
 
美桜がそう思って頬を緩めた時だった。

「あとでじっくりビデオを見させてもらうわ。ダメ出しは、明日のレッスンでね」
 
そう言って立ち去る先生に、

(ああ、やっぱり先生は先生だ)

がくりと美桜はうなだれた。