「いや、違うんだよ、あの・・・」

運んだのはアレンで、と続けたかったが、ん?と小首を傾げる美桜に見つめられて、慌てて下を向く。

「いや、なんでもない」
「そう?仁くん、何か様子が変じゃない?あ!もしかして私、そんなに重かった?」
 
やだー、やっぱり太ったのかな、と美桜は見当違いな思い込みをする。

「ここに来てから、おいしいものたくさん食べたもんねー、仕方ないよ」
 
パンケーキを食べながら絵梨が言うと、ますます美桜は焦った顔をする。

「やっぱりそうかな。あーどうしよう、衣裳が入らなくなってたら」
「踊ってる最中に、ビリッ!とか?」
「絵梨ちゃん、怖い事言わないで」
 
両手で頬を押さえて真剣な表情の美桜を見ながら、仁はまたもや声をかけそびれた。

(言わなきゃ。美桜ちゃんを部屋まで運んだのは俺じゃなくてアレンだって。でも・・・)
 
それを言ったら、夕べアレンがここに来た事も言わなければいけない。
そしてなぜすぐ帰って行ったのかも。