「ああ、いよいよ最後の朝か。さらば、我が心のオアシス、フォレストガーデンよ」
 
まるで演劇のように、手を伸ばして見上げながら絵梨が声を張る。

「あはは。絵梨ちゃん、上手ね」
陶酔している絵梨に、美桜が笑う。

「さ、せっかくおいしいクロワッサンとコーヒーが冷めちゃうよ」
「そうね」
 
促されて絵梨は再び食べ始めた。
 
最後の朝食だからと、三人は一階のオープンスペースにあるカフェで朝食を取ることにした。

美味しいオムレツにフレッシュなオレンジジュース。
ゆったりと時間をかけながら、贅沢な気分を堪能する。

「それにしても、絵梨ちゃん元気ね。夕べ遅くまで起きてたんでしょ?」
「そ!仁と二人でバーで散々飲み明かしてたの」
「眠くない?もう一回寝る?」
「ううん、飛行機で寝たいから大丈夫」
 
それもそうね、と美桜は納得する。

「私は逆に、すごくたっぷり寝ちゃったのよね。いつの間に寝たのか記憶にないんだけど。飛行機で寝られるかなあ」
 
そう言って美桜は、さっきからずっと黙っている仁に向き直る。

「夕べ、仁くんが部屋まで運んでくれたんでしょ?ごめんね、重かったよね。ありがとう」
 
美桜に急に顔を覗き込まれて、仁はどぎまぎする。