コンコンとノックの音がして、メアリーはベッドメイキングの手を止めた。

「はい」
 
ドアを開けたメアリーは、思わず驚きの声を上げる。

「アレン様!もうよろしいのですか?まあ!美桜様!」
 
ノックしたのがアレンだというだけでも驚きなのに、アレンは美桜を抱きかかえて立っていたのだ。

「いったい何が。美桜様?」
「大丈夫だ。疲れて眠ってしまっただけだ。ベッドへ」
「は、はい!こちらです」
 
メアリーは急いでベッドへ駆け寄ってスペースを整えた。

アレンがゆっくりと美桜を横たえる。

すぐさまメアリーは、美桜にブランケットを掛けた。

が、アレンはじっとその場から動かず、美桜を見つめたままだ。

「あの、アレン様?」
 
何かを思いつめたようなアレンの様子に、メアリーが戸惑いながら声をかけると、アレンはふっと顔を上げてメアリーを見た。

「ゆっくり寝かせてやってくれ。頼んだぞ、メアリー」
「はい。承知致しました」
 
メアリーが頭を下げると、アレンは頷いて足早に立ち去った。

(アレン様があんな表情をされるなんて)
 
ドアを閉めながら、メアリーは考える。

(何があったのかしら。あんなにお辛そうなアレン様は初めて)
 
眠っている美桜を振り返ったものの、答えが出るはずもなかった。