ダン!と大きな音がして、仁はびくっと体をこわ張らせた。

顔を上げると、入口のドアに拳を打ち付けた状態でアレンが立っていた。

「アレン!大丈夫なのか?昨日倒れたって」
 
そこまで言って言葉を止める。

こちらを見るアレンの表情は、今まで見たことがないほど怒りに満ちていたからだ。

「・・・見損なったぞ、仁」
 
絞り出すように言うアレンの声は、本当にアレンなのかと疑うほど低かった。

「な、何を」

返す言葉が出てこない仁に、アレンは固い口調のまま続ける。

「美桜は、お前が相手をする女の子達とは違う。お前だってそれくらい分かっていたんじゃないのか?それなのに」
「・・・お前に、お前に何が分かる」
 
今度はアレンが言葉を止めた。

うつむいた仁が呟くように吐き出した言葉は、感情を必死に抑えようとしていた。

「お前に何が分かるって言うんだ。俺が一体どんな気持ちで!」
 
気付くと仁は、あっという間にアレンに飛びかかり、胸元を掴み上げてドンと壁に押し付けていた。

「俺が一体どんな気持ちでいたと思うんだ!今までずっと、俺はずっと・・・」
 
そう言うと仁はうつむいて肩を震わせる。
まるで何かを堪えるように。

やがて仁は乱暴にアレンから手を離すと、そのまま部屋を出て行った。

残されたアレンは、掴まれた胸元のシャツを握りながら呆然と立ち尽くす。

(まさか、あいつ・・・)

ゆっくりとソファに目を向ける。

(知らなかった。あいつ、美桜を・・・)