桜のティアラ〜はじまりの六日間〜

 「旦那様、入らなくてよろしいのですか?」

 広間の廊下、ドアの前でくるりと向きを変え立ち去ろうとするジョージに、グレッグが声をかけた。

 「坊ちゃまの様子をご覧にならなくても?」
 「構わん。アレンがすっかり元気なのはよく分かった」
 
 そう言って足早に、二階の書斎へと戻っていく。

 (なんということだ。あの音楽。あの二人)
 
 どうにも説明しがたい感情が、ジョージの胸に湧き上がっていた。

 嬉しいのか悲しいのか、幸せなのか切ないのか、どうにも分からない。

 ただ一つ確かなのは、ゆりえに会いたい、という切なる想いだった。