「アレン!具合どう?熱は?」
そう言いながら、額に手を当ててくる。

「え?何のこと?熱なんてないよ」
 
思わず美桜の手をよけると、何言ってるの!とまるで咎めるような口調の美桜にびっくりする。

「うん、大丈夫ね。もうすっかり良くなったみたい」
 
アレンの額から手を離して、美桜はほっとしたように微笑んだ。

(いったい何がどうなってるんだ?)
 
アレンの頭の中は、まだハテナでいっぱいだった。

「はっ、み、美桜様!」
 
急に声がしたかと思ったら、ソファの方からクレアがベッドに駆け寄ってきた。

「申し訳ありません。私ったら、すっかり眠ってしまって」
「ううん、大丈夫よ。ほら、アレンもすっかり良くなったみたい」
「坊ちゃま!本当ですわね。はあ、良かった」
 
アレンはわざと咳払いをすると、おそるおそる口を開いた。

「あー、えっと、俺、どうしたんだっけ?なんでこの部屋で寝てるんだ?」
「まあ、坊ちゃま!」
 
驚いたようにクレアが目を見開く。

「もしや、記憶喪失では・・・」
「いや、単にあの時の状況を覚えてないだけなんじゃない?」
苦笑いしながら美桜が言う。