そんなある日、父上に呼び出された。

「へヨン、今日は、お前に話したいことがあるんだ。」

父上の不気味な笑みに嫌な予感がした。

「トリカブト王国の皇太子であるトアと結婚することが決まった。」

私の嫌な予感は、見事に的中した。

「嫌です。そんな顔を見たこともない人と結婚するなんて。」

「へヨン。お願いだ。トリカブト王国が我らの国を侵略しようとしているのは、知っているだろ?」

「はい。」

「でもへヨンがトアと結婚すれば、侵略しないと約束してくれたんだ。お願いだ。へヨン。この国を守るためにもどうか頼む。」

父上は、いつも私を政治の道具として利用する。

あの時もそうだった。

「父上は、いつもそうですね。この国を守るためならば、娘である私も道具にする。」

私の言葉に父上は、苛立っている様子だった。

そんな様子の私に最後の手段かのように私に尋ねてきた。

「何がそんなに不満なのだ?ジェヒョンと離れるのが嫌なのか?」

父上の言葉に耳を疑った。

父上は、私がジェヒョンのことを好きであることに気付いていたのだ。

「いえ、そうではありません。」

私は、精一杯の嘘をついた。

「それに関しては、心配は無用だ。トリカブト王国にジェヒョンも連れて行くことにした。ジェヒョンもお前達の結婚にも賛成だ。常にヘヨンのことを守ってくれるはずだ。」

父上のその言葉に反抗する気力も失われた私は、父上に返事をした。

「わかりました。」

父上が私を政略結婚の道具にしたことが嫌だったのではない。

父上がジェヒョンを使って私をトリカブトに行かせようとしたことが嫌だったのでもない。

ジェヒョンが私の結婚に賛成であることが許せなかった。

今までいつでも側にいたジェヒョンが私が結婚することに関して何も思わないことが悔しくてたまらなかった。

やはり彼は、どれだけ側にいても何を考えているのか分からない。

私の一方的な愛にすぎなかったのだ。