「一体、どうやって眠っているあたしを起こさずに誘拐したの？」

グルグルと部屋の中を行ったり来たりしながら考える。すると、ドアがガチャリと音を立てて開いて行く。犯人が来たのだ。咄嗟にエリーは身構えたのだが、姿を見せた人物を見て驚いてしまう。

「ハリーさん！？」

そこにいたのは、いつもお昼にパンを買ってくれるハリーだ。いつものスーツとは違い、黄色のローブを着ている。そして、その手には細い木の枝のようなものが握られていた。

「おはよう、お姫様。よく眠れましたか？」

ヨーロッパ貴族が見せるボウ・アンド・スクレープをし、ハリーはニコニコと笑っている。エリーはますます戸惑ってしまった。

「あの、ここにあたしを連れて来たのはハリーさんなんですか？」

「そうですよ」

「一体、何のために？」

「あなたを閉じ込めておくためです」

爽やかな笑顔でとんでもないことを言われ、エリーはくらりと目眩を覚えてしまう。すると、「危ない！」とハリーに抱き止められた。