オーブンにパン生地を入れたリジーが戻ってきて質問をする。その質問はエリーにとってかなり痛い。

「恋人……結婚か……。あたしには無縁の言葉かなぁ」

もう二十九歳で、友達のほとんどは結婚し子どもがいる。だが、パンしか見てこなかったエリーは美しい容姿だというのに、年齢=恋人いない歴なのだ。それをリジーに言うと、彼女は「もったいない!」と再び言う。

「エリーさん、子どもがほしいって考えてるなら早めに行動しないとダメですよ!女性にはタイムミリットってものがあるんですから!」

「それはわかってるけど……」

変なスイッチが入ってしまったリジーに両手を包まれ、エリーは戸惑う。リジーの目はギラギラと眩しい。

「今度、一緒に婚活パーティーに行きましょう!エリーさんならきっとすぐにいい人が見つかります!」

「……気が向いたらね」

エリーの言葉にリジーは不服そうだったものの、カランコロンとベルが鳴る。エリーはやって来たお客さんに感謝しつつ、笑みを浮かべて言う。