私は最後の禅ちゃんのさみしげな表情が
気になってその後ろ姿を目で追う。

「桜良?家に帰るよ?」

すると竜海さんが私の頭に手を置いて
優しい声色で言った。

私が隣の竜海さんを見上げると
竜海さんは私に向かって柔らかく微笑んだ。

“家に帰るよ”

私はそれが自分の家に一緒に帰ろうと
言われているようでドキッと心臓が跳ねた。

「あまり遅いと家の人達、心配するだろ?」

ただ送ると言われてるだけなのに
変に期待して馬鹿みたいだ。

私は気を取り直して
「は、はい」と返事をすると
すぐさま助手席へと乗り込んだ。