余裕な後輩くんは,一途に先輩を想う。

パチリと目を開けた私に木村さんは言った。



「とっても可愛いひとだなって,思ってます!」

「ふぇっっかわ?!」

「はい!」



聞き違えたかと疑えば,そんな気持ちも吹っ飛ばされるスマイルに迎えられる。



「デスクからは想像も出来ないくらい雑多に詰め込まれたカバン! 変なのに可愛い付箋! 誰もいないところでよろけては,恥ずかしそうに周りを見るその姿! もう何もかも可愛い! 私の理想の女性そのもの! ギャップの神! だから先輩は先輩なんです!」



ちょっちょっと待って,そんなこと思ってたの?!

って言うか,全部見られてたの?!

私は情報量の多さに,目を回した。

彼女は構わず,演説のように続ける。



「普段の落ち着いてて綺麗で完璧な微笑みもイイ。でもさっきみたいな恥ずかしそうなはにかみ笑いは反則級! 引き出したのが出雲くんだと思うと,若干癪だけど……」



途中から,もう私なんか見えてないんじゃないかと思った。

幸いなのは,他のお客さんが怒ることもなく,感心したように私達を見ていること。

恥ずかしいよ,木村さん。