上目で見たまま,裏であわあわと慌てる。

ぱちくりと大きな瞳を睫毛で隠した木村さんは,おかしそうに笑った。



「そう,ですね。そうですよね! 私が出雲くんに遠慮する必要なんて,無いですよね!」



その勢いで,ごくりと紙コップの中の水を喉に流す。

ぷはっといい音がした。



「先輩の彼氏でも何でもないんだから!」



お皿を支えていた左手が大きく揺れて,一緒になって揺れたつゆが枠を飛び出て机に跳ねる。



「……え?」



木村さんが驚いたように私を見つめた。

私も動揺を内に戻せないまま,どうしようと目を回す。



「ぁ……ご,ごめんなさい! そっち飛んでない?」

「はい,大丈夫,ですけど」



おしぼりで机を拭く私を,木村さんはじっと見ていた。