「わ~っ美味しそうですね……!」



ウチの社員にももれなく人気な,会社近くのお蕎麦やさん。

いつになくご機嫌な木村さんが,目の前で箸を割る。

そうだねと相づちを打ちながら,私もそれに倣った。

一緒にお昼を食べる,という先日の約束を果たす時が来たのだ。



「ふふふっ。私,先輩とお昼するの,夢だったんです。なかなかタイミング掴めなくて……今日は出雲くんもいないし,先輩独り占め出来て嬉しいです」



妙に機嫌がいいのは,それか。

そうしている間にも,木村さんははふはふと海老天を頬張っていて,私も急いでおそばに口をつける。



「あの……そんなに気を使わなくても,誘ってくれていいんだよ?」



あ,違う。

変に先輩風を吹かしてしまった。

私がそうしたいだけなのに。