爽やかな晴天の朝、私はとても清々しい気持ちで校舎を見上げた。
やっと……!やっと七海学園高校に入学できた……っ!パートナは誰だろ…??


意を決して部屋に入ると黒髪のイケメンがいた。本当に綺麗な人……造り物みたい。涼し気な目元に透き通った肌…。頭良さそうだし……!正直……顔、すごいタイプだなぁ
「あ、君が私のパートナー君かな??私は璃浜流愛!よしろしくねっ!」
そう言い、握手しようと思って手を差し出す。
「俺、城波凜音。じゃ、片付けするから……。」
えーっ!?イケメン君……、凜音君は私の手をとることなく自分の部屋に籠もってしまった……。
顔、真っ赤だったけど大丈夫かなぁ?手をとってくれなかったのはショックだったけど……。具合が悪いなら仕方ないかぁ…。




しばらくして片付けを終え、凜音くんの部屋の扉をノックする。
「凜音君…?これから夜ごはん作るんだけど、何がいいっ??一緒に食べよっ!」
「別に俺は外で食べてくるから……。」
扉越しに答えが返ってきた。
「お金もったいないって!遠慮しないで!!あ、それとも料理の腕を心配してる…??」
そうだったら悲しいなぁ〜
「いや……そういうわけじゃ……」
「大丈夫!多分料理上手だから…!!安心して!」
食べられるものにはなるから!
「多分ってなんだよ…っ!!ははっ!じゃあ、シンプルにハンバーグで。」
謎に凜音君はひとしきり笑ってからハンバーグを注文した。
「おっけー!作るから待っててね!また呼びにくるから!」
「はいはい……。」
やったー!凜音君ちょっとは心開いてくれたかなっ??よし!頑張ってハンバーグ作るぞーっ!




ええと、、、やばっ!丸焦げになっちゃった……失敗失敗……。はい、気を取り直してもう一回。
ああっ!今度は生焼け……。
料理好きだけど下手なんだよなぁ……。
たくさん失敗したけど、一個だけ焦げずに出来た…!!これを凜音君に食べてもらおう!!!




凜音君の部屋の扉をノックする。
「何?出来たの?」
「うん!!出来たよっ!!出てきて〜!」
「はいはい…」
よし!出てきてくれた!!
「じゃあ、食べよっか!」
「うん、いただきます」
喜んでもらえるといいなぁ〜!
「ん……なにこれ……美味しいけどなんか入ってる……卵??」
びっくりしてるー!サプライズで入れたかいがあったね〜!
「そうそう!!美味しいでしょ!?」
「うん……だけど、流愛の焦げてね?」
あ、気づかれちゃった……誤魔化そう!
「気のせいだよ、気のせい……!ちょっと色づきが良かっただけ……!」
「はははははは!!」
凜音君大爆笑……。
「なんだよ……!色づきがって…!!はははは!やばい…!!おもしれー……!」
「そんな笑わなくてもいいじゃん〜!」
「だって……あははっ!!」
ずーっと笑ってるから私はジト目で睨む。
「俺のために頑張ってくれてありがとな、流愛。美味しいから安心しな。」
「はー!喜んでくれてよかった!!凜音君と仲良くなれて嬉しい!!」
「っ…!」
また凜音君は真っ赤になった。やっぱ具合悪いのかな…?
「凜音君大丈夫?顔赤いよ??」
「別に……っ!」
「具合悪い……?」
大丈夫かな……?
「いいから!早く食えよ!」
凜音君は声を荒らげて怒鳴った。
「あ……うん……ごめん………。」
余計なお世話だったかな……。
それからは無言になってしまい、気まずい雰囲気のまま夕食を終えた。
やっぱり大丈夫かなぁ……。心配だよ…。
部屋の外では豪雨とともに雷が鳴っていた。

食器を洗って後片付けをして部屋に戻ると、部屋の扉に張り紙があった。「いきなり怒鳴って悪かった。許せ。あと、具合は悪くねーから安心しろ。ハンバーグ美味かったぞ。」と書いてあった。凜音君はやっぱ素っ気ないようで優しいんだな……。あ……なんだろう……凜音君の笑顔が頭から離れないや……。もう一回見たいな……。
ふと、部屋の窓を見ると雨がやんでうっとりするほど綺麗な星が輝いていた。



その後、風船を二人で挟んで割るゲームや遊園地デートとかいろんな課外授業があったんだけどやっぱり凜音君はどのときも怒ったような顔をしていた。ハンバーグのときは張り紙で謝ってくれたんだけど……それ以降事務的な内容しか喋ってくれなくて……。雑談は出来ないし……。七海夫婦に言われたことは怒った顔をしながらこなすけどそれ以外はもうずっと話しかけてくれない。表面上は適度にラブラブってことになってるけど……
別に私はゴールデンカップルになるために入学したわけじゃないから順位はどうでもいいけど……凜音君と破局になるのはやだな……。私は親の仲がとても悪くて小さい頃に離婚してしまって母の手によって育てられてきたから両親のぬくもりというものを知らない。母方の祖父母とも母は仲が悪くて。母は私が小さな頃からとても忙そうにしてて。私を一生懸命育てようとしてくれてるのはわかるけど……正直愛は感じなかった。私はそんな母親にはなりたくないから運命の人を見つけることのできる七海学園高校に入ったのに……。
運命の人の凜音君と仲が悪いのは悲しいよ……。私は凜音君のこと好きだけどな……。普段は冷たいし、傷つくことも言ってくるけど……本当は優しい子だし。話し合ってみようかなぁ……。凜音君嫌がるかな……。
最近は雨の日が多い気がする。気のせいかなぁ……




「流愛ー!!」
友達の女の子が話しかけてきた。
「なぁに??」
「流愛に相談があるんだけど……」
力になってあげたいな!!
「いいよ〜!!何でも言ってごらん?」
「あのね…パートナーの男の子がほんとに過保護で………好いてくれるのは嬉しいんだけどね…」
ふむふむ。
「そっかぁ……大変だね…あのさ、彼にそのこと言ってみた??」
「ううん…言うのが怖くて……」
やっぱりそうかぁ……
「多分ね、彼は気づいてないんだと思うの。人の気持ちって言わないとわからないじゃない?心配な一心でそういうふうに過保護になっちゃってるんだろうから、ちゃんと言ってみたほうがいいと思うんだ。」
「流愛…!!!ありがと!!!彼に言ってみるね!!!」
感謝されるほどじゃないけどね……自分のことが解決してないしさぁ……
「お安い御用だよ!!いってらっしゃい!!頑張って!!!」
「うん!!!ほんとにありがとー!!」
やっぱり、私も勇気出さなきゃだな!頑張って話し合ってみよう!!




数日後の夕食中、私は覚悟を決めて凜音君に話しかけた。
「凜音君…!」
「は?何か用?」
話しかけただけてこんな嫌がられちゃってる……。
「えっと……」
「早くしろよ」
怖い……!言うのためらっちゃうじゃん……!
「凜音君は私の事……嫌い??」
「んなわけねーだろ!!!……あ。」
凜音君はめっちゃ食い気味に否定した。後から食い気味過ぎたって気づいたみたいで気まずそうにしている。
「でも……最近私の事避けてるよね……?」
「だって流愛が悪い……じゃなくて…」
やっぱり……凜音君は私のこと……
「やっぱり嫌いなんでしょ…?ペア、解消しても」
「する訳ねーだろ!馬鹿みたいなこと言うな!」
またしても食い気味に否定する凜音君。でもさぁ、それだけじゃわかんないよ……っ
「っ……、じゃあなんでよお…、凜音君怖いしぃ……私悪いことしたっけぇ…ぐすっ」
思ったよりも感情的になっちゃって大号泣してしまった……
「っ!おい、泣くなよ……悪かったって」
また謝ってくれたけど……
「凜音君は謝るだけでっ……ぐす、教えてくれないじゃないっ……」
「わかったって!言うから!」
「今度はやっぱ嫌いとかぁ…言うん」
「だから!!俺は流愛のこと可愛いって思ってんだよ!!!恥ずくて顔合わせらんないから避けてた!!」
一気に言った凜音君はめっちゃくちゃ真っ赤だった……
「そんな、訳っ……」
あんなに避けてたのに…??
「俺は流愛の作るご飯が好きだ。いつも仏頂面して食べてるけど本当は流愛と話したいと思ってたし、流愛が他の男子と話してたりすると嫌だって思ってた!!俺は、、」
恥ずいって!!一気に褒めないでぇ〜
「もう、もういいよ凜音君!わかった!!こっちが恥ずかしいから!!」
「あ………ごめ……」
いつもと同じように顔を真っ赤に……ってえ!?いつもと同じ…ってことは具合が悪かったんじゃなくて照れてただけ!?!?わぁ……めっちゃ勘違いしてた……っていうかいつも照れてたってことは凜音君は私のこと嫌いじゃないのではっ!?
「良かったぁ!!凜音君、大好きー!」
「ちょ、流愛っっっ!?」
あ、やばっ!勢いにまかせて……って凜音君まっかっかじゃん……失敗した…
「凜音君、ごめんいきなり…」
「いやむしろっ……嫌われてる、て思ってたからっ……俺も…えと……すき……」
「ええええええええええっ!?!?」
「なんだよ!?流愛!!当たり前だろ…!」
「え、ほんとに!?凜音君私のこと……」
「本当だよ!!何回言ったら分かんだよ〜!?」
信じていいみたい!!嬉しい〜!!両想い、かな?
「えへへ……じゃあ、これからもよろしくっ!」
また真っ赤になった凜音君。照れ屋さんなだけだったみたい!
「っ!!!う、うん……っ」

部屋の外では、大きな満月が私達を祝福するかのように輝いていた。