「…あのさ、前のことだけど」


「………」


「確かに言い過ぎたとこもあったし、でもあんなの…あんたが求めてる“家族”なら日常茶飯事だろ」


「………」



悪いとは思っていた。

あの瞬間に謝らせてしまったこと、納得させてしまったこと、罪悪感はもちろん感じていて。


言い終わってから「やべえ」って後悔したんだよ俺も。


だから前みたいに俺のこと呼べよ。
“他人”になってんじゃねーよ。

課題だって本当は困ってるくせに、なに強がってんの。



「ねえ、聞いて───」


「ズッ…、ぐす…っ」



……は?

泣いてる……?


カタカタと小刻みに震える肩、鼻を何度かすすっていて、俺のほうを振り返りもしない。


あのときは俺もいろいろあったから感情的になっていた。


俺にとってトラウマを通り越したサタン級の女が来るし、誰かさんは姉貴ぶって叱ってくるし。

でもいちばんは“お姉ちゃん”と連呼されたことが、俺の気持ちを正面から否定されたような気がして悲しかったんだよ。


だけどいつも元気な女性が弱っている姿だけは、昔から嫌いだ。



「おい、こっち向けって、」


「っ…、」