おかしいのは熱があるから。

熱があるから意識もあやふやで朦朧としてるんだ、たぶん。いや絶対。



「ナナ、ちゃん…?」



ひとつひとつの指を絡ませて、にぎる。


かつて付き合っていた女とはしたことがない繋ぎ方だった。

というより、そいつとは手を繋いだことすら無かった。



「俺、あんたとはぜったい…姉弟になんかならないから」


「え…」


「そんなの誰がなるか」


「ええっ、そこまで…?」



なってしまったら縛られる。

なってしまったら、こんなことも簡単にできなくなる。


たとえこいつがそれを望んでいたとしても、俺は断固拒否だ。



「ゆらの初めて…俺がぜんぶ奪っていいんでしょ」


「う、うん…、言ったけど…」


「なら、責任持てよ」


「あ、はい…」



俺だって誰かのために何かをしたのは初めてだ。

あんな雨のなか家を飛び出したのも、おんぶも交換ノートも、こうして自分から触ってんのも。


ここにいて欲しいって思ったのだって。


でもそんなことよりまずは。

交換ノートに書く話題がまた増えたことが、ほんの少しだけ嬉しかった。