もうごめん、なんて言わないで


 しんと静まり返り、次に玄関が開いたのは二、三分後のこと。


「お前また人んち勝手に入りやがって。鍵はポストに入れとけって……」

 入れ替わるようにして、俊介が騒がしく文句を言いながら入ってきた。

「えっと、西條さんならついさっき出ていったけど」


 私を見つけ、面白いくらいにピキッと固まった。

 視線だけ動かし、この状況を必死で理解しようとしているのがわかる。


「ごめん、勝手に来ちゃまずかったよね」

「いや、違う違う。合鍵渡したんだし、いつでもきてほしいんだけど。そうじゃなくて、昨日の今日で普通にびっくりして。てか、西條とふたりとか、えっ」

 彼は混乱したようにコロコロと表情を変える。

 ぎこちなくソファに座ったかと思えば、自分の家だというのにそわそわと居場所を探している。

 とても可愛く感じた。


「それ、どうした」

 クスッと笑いそうになっていたら、俊介の手で顎をクイッと引き寄せられた。

 右に顔を傾けられ、さっき西條さんにバレたばかりの跡を思い出す。