もうごめん、なんて言わないで



「俺……真空くんの父親だったりしないかな」


 それは、あまりにも突然だった。


「もしあのときの、俺の子供だったらなって……今無性にそう思ったんだ」


 予想もしていなかったセリフに言葉を失い、目を丸くする。

 そうだよ、と言いたい。
 言ってしまいたい。

 内心悶々としながら、すぐそこまで出そうになった言葉がなかなか出てこなかった。


「ごめん、そんなこと言われても困るよな」


 彼は気まずそうに笑い、抱いていた真空を私の腕の中におさめる。

 我が子はとろんと眠そうに見上げてきて、ゆらゆら揺らしながら微笑んだ。


「眠ったみたい。この子、寝かせてきちゃうね」
「なあ、美亜」
「ん?」
「ずっと好きだった」


 目を合わせた途端、なんの脈絡もなく真剣な顔で彼が言った。

 不意打ちのあまり息が止まりそうになる。慌てて目を逸らしたが、きっと顔は真っ赤だ。

 胸元に頬を押し付けて眠った真空が、私の心臓の騒がしさでぐずりださないかと気が気でなかった。


「前に、なんでって聞いたよな」
「え?」
「高校のときマネージャーに誘った理由」


 まさかその話題がここにきて持ち出されるなんて思ってもみなかった。