今日は朝から気温が高い。

 近くのカフェに入り、涼しい店内でアイスコーヒーを飲みながら彼を待った。

【土曜なら休みなんだけど、空いてる?】

 杏奈に背中を押され、話がしたいと勢いでメッセージを送ったら、俊介からはすぐに返信がきた。


「はぁ」


 緊張するあまり少し早くに着いてしまった。

 ストローを回してカラカラ氷の音を立てながら何度時計を確認しただろう。

 座っている奥の席からは扉が開くのがちょうど見える。昼時で少し混み始めた店内にお客さんが入ってくるたび、俊介の姿を探した。

 約束の十二時になる五分前、入店した男性の顔を見てどくんと心臓がはねた。


「ごめん。俺、時間間違えた?」


 私を見つけ近づいてきた俊介は、半分まで減ったコップの中身を見て慌てたように言った。


「ううん、私が早く着いただけ」
「良かった。……あ、すいません。アイスコーヒーひとつ」


 近くを通った店員さんにすれ違いざまに注文した彼は、向かいの席で白いシャツの胸元を暑そうにパタパタ仰いだ。

 お互い探り合いながら様子を伺う。


「この前は待ち伏せるような真似してごめん。連絡くれて嬉しかった」


 涼しい音をたてながらアイスコーヒーが届くと、彼が先に口を開いた。

 あまりにも素直な言葉を並べるもので、私は慌てて首を横に振る。

 体を縮こまらせ落ち着かない。

 呼び出したのは私で何度もシュミレーションしてきたはずなのに、いざ目の前にすると頭が真っ白になった。