ひと通り昨日の出来事を話した私は、唸りながらテーブルに突っ伏した。
「近づけたと思ったらすぐ遠くなるくせに、諦めようとしたら近くなる。昔っから人のこと振り回してばっかりで、どうしたらいいかわかんない」
俊介の真意がまるで分らなくて、もうずっと頭の中をぐるぐるとしていた。
「でもさ、自分がどうしたいのかなんてもうわかってるじゃないの?」
顔を上げたら、冷蔵庫の前にいた杏奈が振り返り、二本目の缶を手にしていた。
「私、美亜を幸せにしてくれるのは旭先生だって思ってた。大人だし優しいし、なにより美亜を一番に考えてくれてるみたいだったから」
目の前でぷしゅっと音を立て、ビールをぐっと美味しそうに飲む。
うん、と声を出し体を起こす私を、頬杖をついてじっと見つめてきた。
「だけどどうしたって美亜の中には青山くんがいる。でしょ?」
確信したかのような口ぶりに戸惑っていたら、大きくため息をつかれた。
「ちゃんとわかってるくせに。本当は昨日なにを伝えにきたのか」
自分の気持ち、はっきり気づいたから――。
私に真っすぐ向けられた俊介の言葉を思い出し、目を泳がせる。
「でも、二度も振られてるんだよ? 高校でもラスベガスでも」
あの言葉は私に向けられた告白だったのかもしれない。そう思いつつ、自惚れてはいけないと気持ちに何度もブレーキをかけて気づかないふりをした。