ヘンダーソン・エグゼクティブ空港。

 チャーター機や自家用機の発着地として利用されることの多いその場所へ、私たちは降り立った。


 砂漠気候のラスベガスは、九月の後半といえどまだまだ夏真っ盛りだ。

 気温三十度の暑さの中、照りつける太陽のせいで涼しい機内を出た瞬間にどっと汗が吹き出す。

 相変わらずぐったりとしている慶タローを横目に、ノースリーブから出ている肩を押さえながら、じりじりとした焼けるような日差しを感じていた。


「凄すぎる」


 機体から直接伸びる階段を降りるなり、愕然と立ち尽くす。私の隣では杏奈が同意するように何度も頷いていた。

 周りには先に着陸していたジェット機があちらこちらにちらばっていて、長いリムジンがすぐ側まで迎えに入る。

 規格外なセレブの世界を目の当たりにしていた。


「美女ふたり。どうよこの景色、ラスベガスって感じじゃない?」


 突然視界に入ってきた駒井くんが、昔から変わらないチリチリの癖毛を得意げにかき上げる。

 見た目だけ大人になったような変わらない様子が、高校時代の彼と重なってなんだかとてもおかしかった。


「うわあ、懐かしい。そのうざい感じ」
「ちょっと。杏奈ちゃんそれひどくない?」


 すかさず反応する杏奈の後ろでくすくすと笑う。

 ふたりの他愛もない会話はグラウンドでじゃれあっていた頃の景色を彷彿とさせ、放課後の練習や真夏の合宿風景が一瞬にして蘇ってきた。


「みんな本当変わらないね」


 嬉しさから自然と言葉が出た瞬間、ふわっとひとりの顔が脳裏にちらついた。