きょとんと手の中を見つめたかと思えば、握っている小さな飛行機を自慢げに見せてきた。
「シュッ! シュッ!」
どんなに機嫌が悪くても不思議と夢中になる魔法のような効果がある。
思わず笑みがこぼれ、内心空気が変わったことにホッとしていた。
「真空。飛行機でしょ、ヒコーキ」
「んー、シュッ」
一度、飛行機雲を指差して『シュッてなってるね』と言ってしまってから、飛行機を見てもシュッと言うようになってしまった。
そんな真空を見つめていたら不意に俊介の面影を感じてしまい、無性に切なくなる。
電車や車には少しも興味を示さなかったのに、初めて空を飛んでいる飛行機を目にしたら興奮して、血は争えないな、と思った。
「すっかりお母さんの顔だ」
喜ぶ真空をあやしていていたら旭先生が微笑んでいた。
「ちょっと前までホヤホヤの歯科衛生士で、自分のことに手一杯って感じだったのに」
「あの頃はご迷惑ばかり」
「いやいや、そうじゃなくて」
しゃがんだまま顔を上げたら、彼は首元に手をやりなぜか顔を赤らめていた。
「先生?」
「えっと、これありがとう。真空くんもわざわざごめんね」
言いかけた言葉を飲み込み、私たちに目線を合わせるようにしゃがんだ。
「ごえんねえ?」
ポカンとしながら聞いた言葉を繰り返すわが子は首を傾げていた。


