「うおおっ」


 前方から興奮した男の声が聞こえてきた。

 広々とした機内の中、フルフラットのシートで心地よい眠りについていた私は、大きな声に起こされて目をしょぼつかせる。


 おもむろに体を起こせばみんなが窓にへばりついているのが見えた。

 そっと近くのシェードを上げると、突然差し込んできた光に目を細める。

 太陽は少し黄みがかった茶色く長い髪を明るく照らしてきた。

 だんだんと目が慣れてきて丸窓の奥に景色が現れた。一瞬にして睡魔もどこかへ吹き飛んだ。自然と、わあっと声が漏れる。


 一面に広がる砂漠と有名なカジノ街が遠くにうかがえるアメリカ、ラスベガス上空。

 十名の乗客を乗せた全長三十メートルの大きな機体が日本を飛び立ったのは十四時間も前のことだ。


 白を基調とした革張りのゆったりとしたシートにウッド調のテーブルからは高級感が漂う。

 フルサイズのベッドやシャワールーム、テレビなどが完備され、まるでホテルの一室が空に浮いているような非日常空間、プライベートジェットの中にいる。