挑むような試すような表情と含みのある言葉に惑った。
“いつもとちがうこと”なら、確かに色々あったけれど。
もしかすると、瑠奈は何かを知っているのかもしれない。
とっさに防衛本能が働き、笑って誤魔化す。
「何のこと?」
「ううん、何でもないよー。何か蓮くんなりの理由があるんだろうね」
いつも通りの声色に戻った瑠奈は、いつも通りに明るく笑った。
それから眉を下げ、大げさにため息をつく。
「でも残念だなぁ……。一緒に新作飲みにいきたかったのに」
「……本当にごめんね。今度行こう」
昨日までだったら瑠奈に応じて付き合っていただろう。
けれど、意味不明なゲームに巻き込まれてしまったいま、頼れるのは蓮しかいなかった。
そんな彼の言葉を軽んずることはできない。
本鈴が鳴り、それぞれが自分の席についた。
ふいにどこからか視線を感じて振り向くと、窓際の一番後ろの席に座っている女子生徒と目が合う。
「…………」
瀬名琴音が、無言でこちらを見据えていた。
小春は戸惑う。
ひとりを好む彼女はなかなか他人を寄せつけず、小春も確か話したことはなかったはずだ。
大人びた美人という印象で、左目には眼帯をしている。
そのせいか、見られると余計に圧を感じてしまう。小春はとっさに前を向いた。
ガラ、と教室の扉が開き、神妙な面持ちの担任が入ってくる。
三十代半ばの体育会系の担任は、挨拶もそこそこに切り出した。
「E組の和泉くんだが、昨日から帰ってないらしい」
連絡すらとれないまま今朝になっても姿がなく、両親により捜索願いが出されたそうだ。
「みんなの中で何か情報を知ってる人がいたら、何でもいいから先生に教えてくれ。それと、23時以降は出歩かないように────」



