「僕の魔法はね、人の潜在意識に侵入するんだ。死者にも意識が存在していて、意識の操作に肉体の死は関係ない。だから死者を操ることも出来る」

 冬真の色素の薄い目が、冷酷な色を滲ませた。

 自身の能力に心底満足気だ。

「ただし、その死体が既に失ってる身体機能や能力を利用することは出来ないよ。例えば、足のない死体を操っても、歩かせることは不可能ってわけ。まぁ、これは生きてる人間を操る場合もそうなんだけど」

 瑠奈は俯くように数度頷いた。

 冬真の魔法の全容を聞けば、彼の自信にも納得だ。

「何となくもう想像つくだろうけど、冬真は誰かを傀儡にしなきゃ会話出来ねぇ」

「うん、僕の代償は“声”なんだ。……いつも身体を貸して貰ってる律には申し訳ないな」

 冬真を眉を下げる。当然ながら、律自身は反応しない。

 傀儡状態の律に代わり、彼の能力は大雅が説明した。

「律の魔法は“記憶操作魔法”。相手の頭に触れれば、その記憶を操作出来る」

 三人が三人とも、いかにも強力だ。

 瑠奈はステッキを取り出す気などとっくに失っていた。

「任意の記憶を消したり、書き換えたりすることが可能なんだ。なくした記憶を蘇らせることは出来ねぇんだけどな」

  使いようによっては、非常に有利な立場に立てるだろう。

 記憶は、その人を構築している要なのだ。

 それを失ったり、知らぬ間に書き換えられたりしたらと思うと、瑠奈は身震いしそうになる。

 ……もしかすると、冬真も同じなのかもしれない。

 だからこそ律を頻繁に傀儡にし、上から押さえつけているとも考えられる。

「あと、律の魔法には弱点がある。時間が経過したり、何かの出来事をきっかけに本来の記憶が戻ったりすることがあるんだ。完璧じゃねぇことが弱味だな」

 大雅はそう締めくくった。

 無論、その可能性が百パーセントでない以上、大いに恐るるに足るのだが。