「単刀直入に言えば、おまえには俺たちの協力者になって欲しい」
「協力者?」
瑠奈はさらに警戒した。
見ず知らずの自分に、どうしてそんなことを頼むのだろう。
捨て駒にされるのではないだろうか。
「具体的には諜報的なことをして欲しいんだ。あとは必要なとき、戦闘要員として手助けしてくれ」
意外にも大雅は、頭の悪い乱暴者というわけではなさそうだった。
生意気な年下ではあるものの、下手にあしらうことができないような威圧感を感じる。
「ちょっと待って、その前にみんなの魔法についても教えてよ。あたしのはもう知ってるんでしょ? これじゃ不公平だよ」
「……そうだな」
協力関係を結ぶなら、いずれは手の内を明かさなければならない。
別に不都合は生じないだろう。
「俺は“テレパシー魔法”だ」
凜と告げてみせた。
相手と沈黙状態で3秒間目を合わせることにより、テレパシー能力を発動できる。
魔術師かどうかの見分けは、その人の持つ波動のようなものがオーラとして可視化されるために一瞥で可能だった。
それだけでは保有する異能までは分からないものの、その相手と目を合わせれば読み取ることができるのだ。
また、大雅が一度でも3秒間目を合わせ、能力を使用した相手なら、それ以降はいつでもテレパシーのやり取りが可能となる。
「トランシーバーみたいなイメージな。顳顬に触れてる間は、俺からも相手からも話せる。聞くだけなら触れる必要はねぇ」
大雅が実際に自身の顳顬に触れながら言うと、瑠奈の頭の中に直接声が響いてくる。
「すごい……」
「俺からは無理だけど、相手からはいつでも切断できる。ま、ほかにも色々できることはあるけどいまはまだいいだろ」
大雅が人差し指を離すと、声は目の前から耳に届いた。
これもまた、かなり便利かつ強力な能力だと瑠奈は思う。
「あ、そうそう。読心は無理。つまり相手の心の中を読むことはできねぇ」
「そうなの?」
「思考の転送はできるぞ。でも、その場合は相手にも送る意思がねぇとだめなんだ。俺が一方的に心を読むのは無理だ」
だとしても、十分すぎるほどの性能だ。
そもそも“3秒間黙って目を合わせる”という発動条件が、簡便で容易な点が強い。
ただ、昨晩そうして大雅に色々読み取られた際、瑠奈は特に思考を送る意思なんて持ち合わせていなかった。
ということは、読み取れるのは思考だけではないのかもしれない。
あるいは大雅が嘘をついているのかもしれないけれど。



