────それぞれの魔法と事情を陽斗にも伝え、この日は解散となった。

 小春の家の門前で足を止める。

「……ごめんな。守りきれなくて」

 俯きがちに蓮が言った。

 小春は慌てて首を左右に振る。

「蓮は守ってくれたよ! ……謝るのは私の方。ごめんね、痛かったでしょ」

「馬鹿、大したことねぇよ」

 消え入りそうな声で謝れば、蓮は笑った。

 しかし、小春の脳裏にこびりついた、あのときの鮮明な赤色が頭から離れない。

 確実に自分のせいだ。

 もう少しで本当に取り返しのつかないことになるところだった。

「私────」

 やっぱり、どうにかしないと。

 代償なんて恐れている場合じゃない。

「いいから、お前は気にすんな。頼むから黙って守られててくれ」

「……分かった」

 懇願するような眼差しを向けられ、小春は頷くほかになかった。

 実際は一ミリも納得などしていないのに。

「また月曜日ね」

「おう、じゃあな。何かあったら呼べよ。時間も曜日も関係ねぇからな」



 蓮と別れた小春は、家の中へ入り自室へと向かった。

 ウィザードゲームのアプリを立ち上げる。

 薄暗い中、電気も点けずに画面を眺めた。

「…………」

 無力感も後ろめたさも申し訳なさも、もう味わいたくない。

 自分のせいで誰かが傷つくのは嫌だ。

 自分が足手まといになり、迷惑をかけるのは嫌だ。

 水に捕らわれたときの溺れる苦しさと、庇ってくれた蓮の血を思い出す。

 小春は二十三時五十九分を待つことにした。

 結局、代償の選択肢にある四つ目が何なのかは確かめられなかった。

 ランダムという意味にしろ、それ以外の意味にしろ、どの代償も選びたくなく、自分では選ばないことにした。

 まさか、こんな瞬間が来るとは思わなかった。

 こんなゲームやガチャなんかに真剣になるとは。魂を売る羽目になるとは。

 なるべく頭を空っぽにしようとした。

 そうでないと、付け入るように弱い自分が囁き出す。



 ……時間になった。

 小春は一度ゆっくりと呼吸すると「④」を選択し、ガチャを回した────。