「なるほど……。話すことはできるんだな」
「そうだね。効果の持続は最大20秒間。もしくは────」
奏汰が右手の拳をほどくと、慧の硬直が解ける。
いまの場合、慧が自力で硬直を解除することは不可能で、20秒が経過するか、術者が拳をほどかない限り動けないのだそうだ。
硬直させられる対象は、一度につきひとりまでらしい。
「厄介は厄介だけど、確かに氷魔法でも応用が効きそうね」
「でしょ? どっちかを小春ちゃんにあげられたらいいんだけどね、異能の譲渡だけはどうやってもできないからなぁ……」
やはり、異能を得るにはガチャを回すか、魔術師を殺すしかないのだ。
「────それはさておき、聞きたいことがあって来たんだ」
メガネを押し上げ、慧が言った。
「運営からのメッセージだが、なんて書いてあった?」
端的に本題に入った。
返答によっては、さらなる疑問が湧く可能性がある。
あるいは正解を得られるかもしれない。
「えっと、読めばいい?」
「ああ、頼む」
ここでも、見せ合えないルールはもどかしいものだった。
それは、疑心暗鬼を生むためなのか、答え合わせを妨げるための時間稼ぎなのか。
「“きたる12月4日、あなたたち3年2組の生徒は全員死にます”」
奏汰はスマホ画面を見ながら、メッセージを読み上げた。
2年B組ではなく、3年2組。奏汰の属するクラスだ。
琴音の言った通り、2年B組というクラス指定そのものは無関係だったのだ。
「“殺されたくなければ魔術師を捜し出して皆殺しにすること。魔術師の中で────”」
「分かった、もう十分だ。悪いな」
慧は奏汰の読み上げを打ち切った。この先は同じだろう。
「メッセージがどうかしたの?」
「実は……わたしたちに来たものには“2年B組”って書いてあったの」
小春が答えると、奏汰は一瞬目を見張り、真剣な表情になった。
「でも、そっか。みんながみんな“3年2組”や“2年B組”じゃおかしいもんね。……ってことは、その部分はメッセージを受け取った人のクラスになるのかな」
「だったら、魔術師は学校に通ってる奴から選ばれるのか?」
珍しく蓮がゲームに関する推測を口にした。慧も「大いにありうる」と同調する。
現状、自分の知る限り魔術師は高校生のみだ。
主に高校生がプレイヤーの対象なのかどうかを確かめるには、例外を探した方が早いような気がする。



