だが、それこそがアリスをおびき寄せられる確実な方法だ。

 冬真はスマホを操作する。

「待て、俺がやる」

 蓮は冬真の手からスマホをふんだくる。

 冬真にやらせるのでは安心出来ない。

 一時的にアリスのブロックを解除した。

「どうしてわざわざ君が……」

「まぁまぁ」

 ぼやく冬真を苦笑した奏汰が宥め、スマホから遠ざける。

 ちょうどそのタイミングでアリスからのメッセージを受信した。

【生存者リスト見たで。桐生と佐久間のこと片付けられたんやな。早坂もあんたの仕業か?】

【何にしろ残りの顔ぶれ見た限り、如月の天下取りは確定やな】

 スマホを持つ蓮と画面を覗き込んだ小春は、ほっと胸を撫で下ろす。

 間一髪だった。

 危なかった、これを見られたら────。

 蓮は素早く“河川敷に来い”とだけ打つと、送信しようとした。

 慌てて小春が「ちょっと待って」と制する。

 明らかに冬真の口調ではないし、冬真らしくもない。

「あの子、結構鋭いから生半可じゃ罠だってバレちゃうよー」

 瑠奈も小声で同調する。

 蓮は口をへの字に曲げ、入力した文字を削除した。スマホを小春に渡す。

「ねぇ、冬真くん。例えばの話なんだけど……憎んでた人を討てたとしたら、何て報告する?」

 やや無理のある例え話だろうか。内心ひやひやしながら小春は尋ねる。

 存外彼は素直に思案した。

「うーん……“思い知らせることが出来て何よりだよ。これであいつも分かったんじゃないかな? 端から僕には敵わないって。あぁ、死んでから分かっても意味ないか”」

「よし、お前一発殴らせろ」

 腕捲りをする蓮を小春は慌てて止めた。

 やはり、冬真は冬真だ。間違いない。爽やかな笑顔を浮かべながら鬼畜な言葉を並べ立てる姿があまりにも似合っている。

 紗夜は「ほんとクズ……」と思わず蔑んだ。

「記憶なくなっても本性は変わらないってこと?」

「怖すぎるんだけど……」

 奏汰と瑠奈は、ひそひそと声を潜め囁き合った。

 心苦しさを覚えたものの、小春は今の冬真の言葉をそのまま文字にする。

 それから“河川敷に来てくれる?”と打ったものの、はたと指を止める。思案するように顔を上げた。

 何か尤もらしい口実はないだろうか。

「私の名を出すがいい」

 小春の考えていることを察した紅がいち早く名乗りを上げた。

「あいつは、この中では特に私を恨んでいる。私を見つけたと言え」

「……分かった」

 小春は頷き、再びキーボードをタップする。

【藤堂紅を見つけた】