7月10日。今日は志貴の誕生日。

朝、新那と出かける志貴を見送った直後からパーティーの準備へと取り掛かる。

今日集まるメンバーは、新那と怜央、それから、志貴と同じクラスの女の子。

どんな子が来るんだろう、志貴とはどういう関係なんだろう。

そんなことばかりが気になる。

これが親心というものなのだろうか。

3時間ほどかけて料理を作り終えた私は軽く掃除をしたあと、一息ついた。

「あ、そろそろケーキ取りに行かなきゃ」

ケーキは昔から父が買ってきてくれていたものと同じものを用意する。

私はフルーツケーキ、志貴はチョコレートケーキ。

父には甘さ控えめのチーズケーキだった。

一昨年のパーティーを思い出しながら、馴染みのお店でケーキを受け取った。


その帰り道。

ポケットの中でスマホが震える。

ケーキを傾けないよう、そっと手に取ると、画面には知らない番号が表示されていた。

一度目は無視したものの、何度もかかってくるその電話に緊急時かもしれないと不安を抱いた私は表示された受話器のマークをスライドさせる。


「もしもし、」

『あ、志貴くんのお姉さんですかー』

その声は2週間前、私を恐怖に落とし入れた男のものだった。