「あの、ここって」
目的地を知らされぬまま、バイクで移動すること20分。
連れてこられた先は若者が多く集まる繁華街だった。
「ねぇ。昨日、仕事内容は俺の側にいることって言ってたけど、具体的には何をするの?」
暴走族がどういう活動をしていて、姫に何を求めているのか。
私はまだ何も聞かされていない。
「言葉どおりだ。特に何かする必要はねぇよ。俺の側にいれば周りが勝手に瑠佳のことを認知するからな」
そうか、私の役割は櫻子さんの代わりに他の暴走族のターゲットになること。
そのためにまずは、私が姫であることを周囲に知ってもらわなきゃいけないんだ。
「私はてっきり戦うのかと思ってた」
「は?んなわけねぇだろ。俺が姫に強さを求めたのは自己防衛のためだ。戦わせるためじゃねぇ」
「そっか、」
「お前はただ俺の側にいて、護られときゃいいんだよ」
「な、何それ」
歯が浮くような台詞には続きがあり、「俺が護るってことは、傷ひとつ、つけさせねぇってことだ」と怜央は真剣な表情で口にした。
その言葉は私を安心させるためというよりも、本当にそれができるから言葉にしたのだろう。



