昨日、暴走族総長が笑うのを見た。

そして現在(いま)、天使のような親友は私の前で鬼の形相を浮かべている。


「瑠佳ちゃん、私はまだ完全に納得したわけじゃないからね。暴走族の姫(小声)なんて」

「わ、わかってるよ、新那」


新しいバイトが決まったことを私は今朝、新那に伝えた。

すると、休み時間になるたびに「やめといたほうがいいよ」と訴え続けてきた彼女。

暴走族の姫なんていう、特殊なバイトをすんなりと受け入れてくれる親友なんていないだろう。


私はそれをわかった上で真っ先に彼女に話をした。

新那に隠し事はしたくなかったからだ。

「今までよりも時間に余裕ができるから、志貴との時間も増えるの」

その言葉で、ようやく納得してくれた。


「危険なことはしないで、何かあったらすぐに連絡してね?」

「うん、約束する」

「絶対だからね!」

「うん。ほら、新那早く部活行かないと。私も怜央待たせてるから」

「うぅ……わかった」


心配性の新那を見送り、正門へと急ぐ。