「あ、詩織、見て虹!」



徐々に雲が晴れて太陽が見えて、空に虹がかかった。


一番に、詩織に見て欲しかった。



「……綺麗」



詩織がそう呟いて、空を見上げていた。


詩織の笑顔を、今初めて見たかもしれない。


それを見れたことが嬉しかった。


この虹に感謝すべきかもしれない。


心臓がドキドキする。


それくらい、嬉しかった。



「俺、いつかあの虹の麓に行ってみたいんだよね」


「でも虹の麓って追いかけても行けないんじゃ……」



そんな詩を国語の教科書で見たことがある。


虹の麓にいるのはラッキーなことなのに、実際にそこにいる人にはわからない。


無理だとわかっていてもそこに行ってみたくなる。



「そう、それがいいんだよ。夢って感じしない?」



夢を見るのは自由だ。


そう、夢を見るのは自由。


クラスメイトに打ち明けた、詩織と付き合っているという嘘。


これが現実になって欲しいという夢。


そんな予知夢を見ることはできないだろうか。




そう思ってしまうほどに詩織に俺は惹かれていて────


詩織のことが好きになっていた。