「そうだよ。だから、いじめとかくだらないことはやめろよな」
私が陰口を言われていたことを知っていたのかどうなのか、神代くんはそう言い放った。
「颯馬がそんな陰キャと」
「詩織、行こ」
「……ちょ、待ってよ!話終わってない!」
陽子ちゃんが必死に止めようとしているのを遮るように、神代くんが私の手を引いて教室から連れ出した。
私と神代くんの手は繋がれたまま、廊下を堂々と歩く。
「待って、神代くんっ!……神代くんってば!」
ふと我に返ってそう声をかけるけれど、神代くんは止まってくれない。
「ほら、靴履き替えて」
私の言うことも無視されて、ただただ笑顔をこちらに向けるだけ。
「……なんであんなことっ!」
まだ人の少ない生徒玄関で、そう叫ぶように声を出した。
必死だった。
あんな嘘を教室で吐いた理由が、知りたかった。
「あのままだったらまた変な噂で責められるところだった」
神代くんは、私の問いかけにそう答えた。



