私から近づいてるんじゃない。


勝手に神代くんがまとわりついてくるんだ。


でもそんなこと言ったからって、私の話を聞こうとする人なんていない。


前だってそうだったんだから。



「黙ってないで何とか言いなよ」



私の言うことなんて、絶対に信じないくせに。



「何なに?どうかした?」



そんなどうしようもない私に助け舟を出してくれたのは、神代くんだった。



「……どうして」



さっきまで鎌田くんと話していたはずなのに。



「か、神代くん!?」


「神代くんには関係なくて!」



神代くんが来てから、妙にあせり出してアタフタするクラスメイト。


そんな聞かれたくないことをこんなところでするから。


見るからに神代くんのことが好きだってバレバレだ。



「あ、言うの忘れてた」



神代くんがふと思い出したかのように言う。


それも教室中に聞こえるような大声で。


みんななんだなんだと耳を傾けていた。




そして、神代くんは爆弾発言をする────




「俺ら、付き合ってるから。文句ある?」




その衝撃的な一言に、クラス中が静まり返った。


い、今なんて?


そう驚いているのは、私だけじゃなかった。


抱き寄せられた肩が、神代くんの体とピッタリ重なる。


心臓がドキドキと大きな音を立てて、静まらない。


英里ちゃんと未奈ちゃんもまだ教室に居て、目が合った。


今の発言を聞いて、なんて思っただろうか。


怖くなって、すぐに目線をそらしてしまったから、2人がどんな顔をしているかはわからない。


違うって否定しなきゃ行けないのに……


全然、声が出せない。



「な、詩織」



そう私の名前を呼んで顔を覗き込まれる。


神代くんが私の下の名前を呼んだのなんて初めてで、ドキドキが止まらない。


何、これ。


何が起きているのか、全然わからない。



「え、マジで言ってんの?」



そう教室中の沈黙を破って驚きの声を出したのは、神代くんと仲良しグループの1人の岡田(おかだ) 陽子(ようこ)ちゃん。