1分ほどそのまま曲を聞いたあと、「俺もこれ聞いてたわ」と呟き、先生が来たからと自分の席へと戻って行った。


つまらない授業の時間も、ひとりぼっちの休み時間も、時間が過ぎるのがとても遅く感じる。



あっという間に過ぎてしまえばいいのに……



そんな願いは叶わぬまま、やっと放課後がやって来た。


今日も神代くんに捕まる前に早く教室を出なきゃ。


ちらりと神代くんの席の方を見ると、友達に捕まっているようだった。


確か名前は、鎌田(かまた) 圭佑(けいすけ)くんだっけ。


ちょうどいい。


この隙に帰ってしまえば……



「ねぇ、桜庭さん、ちょっといい?」



ドキッとした。


こういう呼び出しはいいことがない。



「な、に……どうしたの?」



恐る恐る口を開く。


私は早く帰りたいのに。



「ちょっと最近調子乗ってない?」


「そんなこと……」


「前の噂だって忘れてないよ?落ち着いたと思ったら、次は神代くんに手出してどういうつもり?」



そう低めの声で言われ、肩を後ろにポンと押された。


それがなかなかいい力加減で、少しだけバランスを崩してしまった。