「いたことないって…え、だって最近毎日遅い時間に見かけるよ。」
吉田は吉田で、由夏は何を言っているんだ?という表情を一瞬浮かべたが、すぐに何かに思い当たった。
「それはあれじゃねーかな、圭はいつも図書室で勉強してるっつってたからその帰り。」
「…は?」
由夏はますます意味がわからないという表情になった。
「勉強?あの高橋が?」
「いやいや、何言ってんだよ。圭ってめちゃくちゃ真面目だぜ?」
由夏はもう、何がなんだかわからなくなっていた。

(真面目?勉強?高橋が?
毎日、図書室で?
あんなに遅い時間まで?嘘でしょ?)

「あーでも、本人はあんまり知られたくないみたいだったから、そう見えないかもな。金髪だし。」
吉田が言った。
考えてみれば学校の近くにいくら遊びに行くところが無いと言っても、あんなに毎日遅くまで学校に残って遊んでいる生徒がいる筈がない。
だんだんと吉田の言葉が頭に沁み込んできて、急に虚しい気持ちが込み上げてきた。