「だから、藤澤はいろいろ勘違いしてるってこと。」
圭吾の言っている意味がさっぱりわからない。
「藤澤さ、俺があの日初めて通ったと思ってるだろ?」
「え?違うの?」
圭吾は“やっぱり”という半ば呆れたような表情(かお)をした。
「前しか見てなかったもんな。」
「え、またそれ…どういう意味…?」

由夏の戸惑った顔に呆れたり面白がったりという反応をすると、圭吾は一呼吸おいて話し始めた。
「俺、あれよりずっと前から毎日あの時間にグラウンドの横を(とお)ってたんだけど。」
「え、うそ…」
他の生徒ならともかく、こんなに目立つ金髪の生徒か通ったら気づかない筈がない。
「通ってたっていうか…毎日立ち止まって見学させてもらってた。」
「えぇ?!それは絶対ない…!また揶揄(からか)ってる…よね?」
絶対に嘘だと思いつつも、由夏の胸が騒ついた。
呆れた表情だが、真剣な目をして無言のまま由夏を見る圭吾の様子で、それが嘘ではないんだと察した。
「え…いつ…いつから?」
「一年の夏休み。」