集結の地/その2


「…科学に裏ずく捜査がこうも行き詰まっているのに対して、超常現象を前提とする切り口では、逆に点と点が次々と結びついていってるんです。刑事事件を追う仕事に命を捧げている身としては、はっきり言って自信がなくなります、これじゃあ…」

新田の言い分はもっともすぎて、秋川は彼に返す言葉を選ぶのに少し時間を要していた。

...


「新田…、お前がめげる気持ちはよくわかるよ、俺にはな。だが、何しろ大切なのは、目の前に出くわしたことからは逃げないことだ。最後まで行き着くにはそれしかない」

「…秋川さんはもう”別部屋”の範疇と見てるんですね、今回の事案を…」

「断定はできないが、ここまでくると、その可能性はかなり高いと考えている」

「秋川さん、俺も静町へ発ちますよ、明日一番で。それで、自分の目と耳ではっきりさせたいんです。せめて…。警察の捜査で解決が無理だというなら、その目の前の現実からは逃げずに…」

「新田…」 

秋川は即、新田の申し出を了承した。
いや、正確には、彼の結論はそれしかなかったのだ。

”今回、ヤツが自分で納得した上で警察捜査の限界を受け入れなかったら、デカである限り、自分の仕事を否定しながら捜査に当たることになる。命をかけるデカにとって、これほど残酷なことはない…”

この時、秋川の脳裏には、かつて自分が初めて遭遇した”別部屋”に流れた事件がよぎっていた。

”俺も今の新田と同じように、あの事件でデカとしての無力さに苦しんだんだ。今後、刑事としての人生を歩むこいつには、決して後悔をさせてはならない”

それは同じ壁にぶち当たり、刑事としてそれを乗り越えた先達者としての壮絶な意志でもあった。