その6


「…やっぱり、本部あたりには報告しなきゃマズイでしょうね」

「そうだな、あれだけ多くの人の前の出来事だし、隠しておくって訳にはいかんだろうね。救急車で顧客が運ばれたことで、通り一遍の報告はしとこう」

「それが妥当ですね。煙と悪臭の件は、原因もわかりませんし、説明求められてもしようがないですし…」

支店長と副長は、会議室で小声に留めて今後の対応を相談していた…。

「津藤くんはどうします?一日くらい休ませますか?」

「うーん、少し横になってたらすっかり回復したようだし、本人が大丈夫なら、無理に休ませなくてもいいだろ」

「しかし、もしまたあんなことがまた発生したら、悪いうわさが立って、利用客の減にも繋がりかねませんよ」

副長は、神経質そうな物言いをした。

...


「だけど、津藤君が原因だと、はっきりしてる訳でもないしね。様子を見たらいいだろう。パワハラとかで騒がれたら、かえって困るよ、キミ」

さすがに”パワハラ”のフレーズに言及されると、副長はすんなり引き下がるしかなかった。
しかし、そこはやり手の江田副長で、違う角度で支店長に提案を申し出た。

「とにかく、小峰さんですよ。彼女は間違いなく、津藤に向かって現金を投げつけましたからね。その直後に、煙と臭いですよ。明日にも見舞いがてら、小峰さんに会ってきましょう。さりげなく、現金を投げた件、聞いてみます。あとあの発作についても」

「うん。キミ、頼むよ」

ここで二人は会話を切り上げ、会議室を出て仕事に戻った。