帰点と起点/その8
「…ここで、1週間前から行方不明になり、捜索中だった岐阜県○○町の小暮晴香ちゃんが無事保護された報道の続報です…。では、○○署前の○○さーん…」
「…先ほどもお伝えしましたが、晴香ちゃんは本日午前9時ごろ、自宅近くの神社でしゃがんでいるところを通りががりの住民に発見され、その後、無事警察に保護されました。晴香ちゃんは発見当時、行方不明時に着用していたピンクのトレーナ―にジーパン姿だったということです」
「○○さーん、晴香ちゃんの体調とかははどんな具合なんでしょうか?」
「はい…、発見後の晴香ちゃんは、そのまま病院に運ばれましたが、幸いけがもなく健康状態も特段異常がないとのことです。また、精神状態も比較的、落ち着いていたことから、警察が先程から晴香ちゃんに事情を聴取していました…」
...
「…晴香ちゃんは1週間前の夕方、発見された場所と同じ神社でかくれんぼをしていて行方不明となりました。晴香ちゃんの話では鬼で数を数えていた際、20代くらいの女性に声をかけれたところまでは覚えているそうですが、その後は記憶が途切れており、気が付くと神社下の竹林で寝ていたそうです」
「…ここまでは既にお伝えした通りなんですが、その後新たな事実が判明しました。晴香ちゃんが発見されたその竹林の正面には○○ナンバーのバイクが停まっており、ナンバーから所有者を調べたところ、そのバイク所有者である千葉県在住の女性も昨夜から行方不明で、今日の昼過ぎに地元の警察に捜索願が届けられたそうなんです」
「えー、○○さん、それ、どういうことなんですか。そのバイクの女性が晴香ちゃんが1週間失踪した件と関係があると警察は見ているんですか?」
「はい。近所の人の証言では、そのバイクは昨夜遅くから停まっていたということで、当初はこのバイクを運転していた人間が晴香ちゃんの失踪と何らかの関連があった可能性もあると見て、警察でバイクの持ち主を調べていたんです。ところが、持ち主の女性は昨夜までは家にいたということで、この1週間、仕事にも出ており、千葉と岐阜を往復する時間を留守にした形跡は全くないようなんです」
「…ただ、当事者の晴香ちゃんは失踪当日に声をかけくれた女性はバイクの女性だと信じているようなんです。その女性が晴香ちゃんにかけた言葉もわかったんですが…」
「○○さん、晴香ちゃんはその女性に何て声をかけられたんですか?」
「はい…。”この時間に小さな女の子が神社の正面にいると、どこか別の世界に連れて行かれちゃうから、お姉ちゃんが鬼を代わってあげる”と、そう言ったそうなんですね、その女性は」
「はー…。では、その後晴香ちゃんは記憶が途絶え、気がついたら神社の石段下の竹林で目を覚ましたと…。ところが実際は1週間たった今日だったって訳ですか?」
「はい…。今のところ、晴香ちゃんの供述からはそういうことになると思います。…あっ、今警察から発表がありました。ええ‥、バイクを所有して昨夜自宅から失踪したとみられる女性は、千葉県○○市に住む製薬会社勤務の津藤律子さん25歳ということです。千葉県警では、岐阜県警の協力を得て、津藤さんの行方を捜査していく方針だそうです」
「はい、何とも不思議な出来事ですが、早く津藤さんが無事で発見されることを願いたいですね…。…えっ?はい…、ここで臨時速報です。本日昼前に噴火した御嶽山ですが、噴火直前までレベル1だった噴火警戒レベルを3とすることを、先ほど気象庁が発表したそうです。では、報道センターの○○さん、最新の情報をお伝えください」
「…はい。本日11時52分、長野県と岐阜県の両県にまたがる御嶽山が噴火しました。気象庁では午後12時…」
”長野、岐阜の県境…!”
ここで、もう秋川は漠然とながらある予感が頭を横切った。
だが、あえて新田にはこの時、何も語らなかった。
...
この後、新田には尾隠し地蔵で石毛が昨夜死んだ件を伝えた。
新田の驚きはハンパなかったのが電話でもはっきりわかったが、厳密には、こっちもあっちも”昨夜”ということに一番のショックを受けていたのは、秋川にはすんなり伝わってきた。
二人は一度電話を切り、律子の捜索方針を把握した上で、新田からまた連絡をもらうこととした。
秋川はそのままリビングでテレビを注視していたのだが…。
「…では、地元の住人の方にお話を伺いましょう。…御嶽山の噴火警戒レベルが3に上がったそうですが、地元にお住まいの方はどんなお気持ちですか?」
「びっくりですよ。だって、普通にみんな登山してましたよ。入山規制なんてなかったし。なのに、なんか大規模な噴火になってるみたいで驚いてます。早くねえ、登山者の人が皆無事に救助されるとええんですけんどねえ…」
地元に暮らす80台前後の女性の、この後の言葉は秋川を凍らせることになる…。
「…ここで、1週間前から行方不明になり、捜索中だった岐阜県○○町の小暮晴香ちゃんが無事保護された報道の続報です…。では、○○署前の○○さーん…」
「…先ほどもお伝えしましたが、晴香ちゃんは本日午前9時ごろ、自宅近くの神社でしゃがんでいるところを通りががりの住民に発見され、その後、無事警察に保護されました。晴香ちゃんは発見当時、行方不明時に着用していたピンクのトレーナ―にジーパン姿だったということです」
「○○さーん、晴香ちゃんの体調とかははどんな具合なんでしょうか?」
「はい…、発見後の晴香ちゃんは、そのまま病院に運ばれましたが、幸いけがもなく健康状態も特段異常がないとのことです。また、精神状態も比較的、落ち着いていたことから、警察が先程から晴香ちゃんに事情を聴取していました…」
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「…晴香ちゃんは1週間前の夕方、発見された場所と同じ神社でかくれんぼをしていて行方不明となりました。晴香ちゃんの話では鬼で数を数えていた際、20代くらいの女性に声をかけれたところまでは覚えているそうですが、その後は記憶が途切れており、気が付くと神社下の竹林で寝ていたそうです」
「…ここまでは既にお伝えした通りなんですが、その後新たな事実が判明しました。晴香ちゃんが発見されたその竹林の正面には○○ナンバーのバイクが停まっており、ナンバーから所有者を調べたところ、そのバイク所有者である千葉県在住の女性も昨夜から行方不明で、今日の昼過ぎに地元の警察に捜索願が届けられたそうなんです」
「えー、○○さん、それ、どういうことなんですか。そのバイクの女性が晴香ちゃんが1週間失踪した件と関係があると警察は見ているんですか?」
「はい。近所の人の証言では、そのバイクは昨夜遅くから停まっていたということで、当初はこのバイクを運転していた人間が晴香ちゃんの失踪と何らかの関連があった可能性もあると見て、警察でバイクの持ち主を調べていたんです。ところが、持ち主の女性は昨夜までは家にいたということで、この1週間、仕事にも出ており、千葉と岐阜を往復する時間を留守にした形跡は全くないようなんです」
「…ただ、当事者の晴香ちゃんは失踪当日に声をかけくれた女性はバイクの女性だと信じているようなんです。その女性が晴香ちゃんにかけた言葉もわかったんですが…」
「○○さん、晴香ちゃんはその女性に何て声をかけられたんですか?」
「はい…。”この時間に小さな女の子が神社の正面にいると、どこか別の世界に連れて行かれちゃうから、お姉ちゃんが鬼を代わってあげる”と、そう言ったそうなんですね、その女性は」
「はー…。では、その後晴香ちゃんは記憶が途絶え、気がついたら神社の石段下の竹林で目を覚ましたと…。ところが実際は1週間たった今日だったって訳ですか?」
「はい…。今のところ、晴香ちゃんの供述からはそういうことになると思います。…あっ、今警察から発表がありました。ええ‥、バイクを所有して昨夜自宅から失踪したとみられる女性は、千葉県○○市に住む製薬会社勤務の津藤律子さん25歳ということです。千葉県警では、岐阜県警の協力を得て、津藤さんの行方を捜査していく方針だそうです」
「はい、何とも不思議な出来事ですが、早く津藤さんが無事で発見されることを願いたいですね…。…えっ?はい…、ここで臨時速報です。本日昼前に噴火した御嶽山ですが、噴火直前までレベル1だった噴火警戒レベルを3とすることを、先ほど気象庁が発表したそうです。では、報道センターの○○さん、最新の情報をお伝えください」
「…はい。本日11時52分、長野県と岐阜県の両県にまたがる御嶽山が噴火しました。気象庁では午後12時…」
”長野、岐阜の県境…!”
ここで、もう秋川は漠然とながらある予感が頭を横切った。
だが、あえて新田にはこの時、何も語らなかった。
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この後、新田には尾隠し地蔵で石毛が昨夜死んだ件を伝えた。
新田の驚きはハンパなかったのが電話でもはっきりわかったが、厳密には、こっちもあっちも”昨夜”ということに一番のショックを受けていたのは、秋川にはすんなり伝わってきた。
二人は一度電話を切り、律子の捜索方針を把握した上で、新田からまた連絡をもらうこととした。
秋川はそのままリビングでテレビを注視していたのだが…。
「…では、地元の住人の方にお話を伺いましょう。…御嶽山の噴火警戒レベルが3に上がったそうですが、地元にお住まいの方はどんなお気持ちですか?」
「びっくりですよ。だって、普通にみんな登山してましたよ。入山規制なんてなかったし。なのに、なんか大規模な噴火になってるみたいで驚いてます。早くねえ、登山者の人が皆無事に救助されるとええんですけんどねえ…」
地元に暮らす80台前後の女性の、この後の言葉は秋川を凍らせることになる…。



