門出のあなたに




学校から、駅を挟んで反対側にあるちょっと寂れた風のショッピングセンター。


一階フロアの隅っこに、ゲームコーナーが設えてあった。



数人の子供が遊具に乗って遊んでいて、他にも学生が一組居た。




近所の人が買い物に来るようなショッピングセンターだから、子供用の遊具のほうが多くて、ゲーム機は十台もないほどだった。




「ここに、こんなのあったのか……」




そう言って、笠寺は珍しいものを見るように辺りを見回していた。



小春と早紀は、いつものゲーム機の前に鞄を置いて、そうして振り返って笠寺を呼んだ。




「先輩。……これですよ? こんなのでホントにいいんですか?」




キャッチャーの中には丸いケースに入った色々な雑貨が積んである。



一セット二百円で、つまり、上手くしたら二百円の代物を、笠寺は親友にプレゼントであげようというのだろうか。




「うん、いいよ、いいよ。でも、一応試しに俺がやってみてもいいか?」




「勿論ですよ」




「私たちが位置教えます」




そう言って、小春と早紀はキャッチャーのケースを二手に分かれると、まずお目当てのキーホルダーを探した。



しかし、生憎拾いやすいところには見当たらない。




「先輩。二百円では上手くいくか分からないんで、一応四百円賭けのつもりでいてくださいね」




「オッケー、分かった」




笠寺がそう言って硬貨を入れてボタンを押す。



アームが伸びて、小春と早紀は笠寺を誘導した。




「もーちょっと右だと思います」




「ちょっとずつ、こっちに伸ばして……。ああっ、来すぎたぁ」




悪戦苦闘したのに、結局目的のカプセルが取れなかった笠寺は、「よろしく頼むわ」と言って、小春にバトンタッチをしてきた。



小春も一回の挑戦では取れなくて、結局四枚の硬貨をつぎ込むことになったけど、なんとか目的のカプセルは取り出し口に出てきた。



コロンと丸いカプセルの中に、小春とお揃いのキーホルダー。




そして次は、その向かいにある手芸屋さんだ。



小春のキーホルダーに付けてあるのと同じチェックのリボンを買って、裁縫セットのハサミで短く切ると、キーホルダーのクマにリボンを結ぶ。



出来上がったクマのキーホルダーを、笠寺は嬉しそうに見た。




「これでホントにいいんですか?」





「うん。サンキュ」




そう言って、これはお礼、とポケットからチョコレートの箱を取り出して渡してくれた。



でも、小春たちはゲームコーナーで遊ばせて貰っていたのであって、そんなの申し訳ない。




「いいですよ。それより先輩が食べてください。勉強疲れに甘いもの」




「いや。本当にこれが欲しかったから、助かってるんだ。リボンまで結んでもらって、言うことないんだよ。な、受け取って欲しい」




笠寺はそう言うとチョコレートの箱を小春と早紀にぐいぐいと押し付けてきた。



そこまでされて受け取らないのも失礼だろうと、二人は箱を受け取った。




「ありがとうございます」




「こちらこそ、本当にありがと」




笠寺が本当に嬉しそうに言うものだから、小春たちまで嬉しくなる。





彼の親友さんに対する気持ちが、ちゃんと伝わるといいなと思った。




チョコレートは早紀と半分こした。