溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

 だから俺は、菜花と別れる決断をした。

 菜花には、幸せになってほしい。

 もちろん、他の輩には絶対に渡さないけど。

「俺は菜花と別れたからって、菜花を諦めるほどの男じゃないから大丈夫だよ。菜花が俺のことを好きじゃなくなっても、また好きにさせればいい話だから。」

「流石、独占欲大爆発庵。庵のそういうとこは僕、すっごく好きだよ。」

「別に兄さんに好かれても嬉しくない。」

「相変わらずなのちゃん以外には辛辣なこと。本当、庵って面白いなぁ。」

「あっそ。」

 ……って、道草食ってる場合じゃない。

 本当にそろそろ帰らないと、今日の分の勉強が終わらない。

 適当に終わらせてるから焦らなくても良いけど、父さんに何を言われるか分からない。

 面倒……と思って心の中で、盛大に舌打ちをする。

「もう帰る。」

 兄さんに付き合ってる暇はないんだから。

 病室の扉に手をかけ、出ようと扉を開ける。

「庵。」

 その時、兄さんに声をかけられた。

 さっきまでのふわふわした喋り方じゃなく、凛とした声が俺の耳に届く。